子どもが火事を起こした場合の責任能力は?
子どもが火遊びをして火事を起こし、他人の家が燃えてしまったとき、親は損害を賠償しなければならないのか―。あまり考えたことはないかもしれませんが、火事による被害は非常に大きく、子どものしたことと安易に考えると重大な問題になりかねません。
原則、11歳未満の子に責任能力ないが
親は監督責任により賠償義務
子どもが他人に故意または過失によって危害を加えたとき、11歳未満の子どもには原則として法律上責任能力は認められず、11歳から14歳の子どもでも具体的な事情により、法律上責任能力が認められないこともあります。
子ども自身に法律上責任能力が認められない場合には、子どもに損害賠償義務は発生しません。もっとも、子どもに法律上責任能力が認められない場合には民法714条により、親に監督責任に基づく損害賠償義務が発生してしまいます。
重大な過失がないとの立証は困難
裁判所でも認める例ほとんどなし
ただし、過失により火事を起こした場合、民法と失火責任法という特別の法律により、親が子どもの監督について重大な過失がなかったことを主張・立証したときには賠償義務を免れると考えられています。
重大な過失がなかったことの証明は、一見すると簡単なことのように感じられますが、実際に裁判所が、親に重大な過失がなかったと判断した例はほとんどありません。なぜなら、子どもに常日頃から火遊びをしないように注意をしていたり、マッチやライターなどを子どもの手の届かないところへ厳重に管理したりしているような家庭は実際には少なく、また仮に注意や管理をしていても、そのことを証明することは非常に困難だからです。
親は道義的・法律的にも責任が発生
さらに、子どもに法律上損害賠償義務が認められる年齢であっても、親の監督責任が全く免除されるわけではなく、子どもとは別に損害賠償義務を負うこともあります。
このように子どものしたことについて、親には道義的な責任だけでなく、法律上の責任も発生してしまいます。火事に限らず、お子さんのことで何か問題が起こったときには安易に考えず、弁護士に相談していただければと思います。
山陽新聞レディア(H25,2,27)
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