自力救済の禁止

「自力救済」。聞きなじみのない言葉だと思います。司法手続きを利用することなく、自身の力で強制的に権利を実現することをいいます。

お金の貸し借りによるトラブル
返済がなくても勝手に金品奪うと違法

例えば、友人にお金を貸したり、物を売ったりしたとします。しかし、弁済期(返す合意の日、または支払い日)が来ても、友人はいっこうにお金を支払ってくれません。お金を貸している人は「お金を貸している自分が債権者であり、友人に金銭を請求する正当な権利がある」と、友人の態度に不満を募らせるでしょう。そのような状況でまどろっこしくなり、「口で言ってもだめならば」と次の行動に出ることにしました。友人宅を訪れ、本人の承諾なしにお金の代わりになるような金目の物を持って帰ったのです。これは窃盗罪(刑法235条)であり、住居侵入罪(刑法130条前段)にも当たる可能性があります。さらに、友人が帰るよう促したにもかかわらず帰らなかった場合、不退去罪(刑法130条後段)にも該当する恐れがあります。

個人で他人の財産差し押さえは禁止
裁判所が許可した場合に限り強制執行

これらの行為が、なぜ犯罪になるのでしょうか。問題は、司法手続き(裁判所)を通さずに、個人の力で他人の財産をその意思に反して取得している点にあります。日本は法治国家なので、他人の財産を強制的(その意思に反して)に取り上げる場合、裁判所命令が必要になります。

警察も、国民の財産を強制的に差し押さえる場合、基本的に裁判所の令状により行っています。つまり、裁判等によって、裁判所が適法に他人の財物を強制的に取り上げてもよい、と許可した場合に限り、強制執行という手続きにより他人の財産を強制的に取り上げることができるというわけです。

自己判断でなく弁護士に依頼を

もしこのような事態に直面した場合、自分で判断することなく、まずは弁護士に相談してください。弁護士は、当事者の話を聞いて証拠関係を精査し、裁判での勝訴見込みをお伝えします。もっとも、証拠の不足等により弁護士が難しいと判断することもあります。

 

山陽新聞レディアホームロイヤー(H25.9.25)