敷金と保証金について

 アパートを借りていてそこから退去した後、敷金を返してもらおうと貸し主に請求したところ、逆に貸し主からリフォーム代金等の請求書が送られてきたことはありませんか。

未払い家賃や物件の補修に充当
過失による損害以外、敷金は返還

 家を借りる際に必要な敷金や保証金とは、家賃の未払いがあったときや、借り主の故意や過失によって賃貸物件に何か損害を与えてしまったときに、家賃の未払い分や補修代金の支払いに充てるため、借り主が貸し主にあらかじめ納めておくものです。借り主が通常の使用しかしていないにもかかわらず発生した賃貸物件の損耗や、経年劣化により発生した損耗の補修代金は、家賃の中にすでに含まれていると考えられていますので、敷金等から差し引くことは許されていません。

 つまり、誤ってタバコの火で畳を焦がしてしまった、誤って窓ガラスを割ってしまったなどの故意・過失に基づく損耗がない場合には、敷金は差し引かれることなく返ってくることになります。この考え方は裁判所でも固まっており、国土交通省作成のガイドラインでも明らかとなっています。

裁判所の手続きでも借り主が有利
例外的に返還されないケースも

 貸し主が交渉のみでは敷金の返金をしてくれない場合、「少額請求訴訟」という簡便な裁判所の手続きも用意されています。また訴訟において、故意・過失に基づく損耗があると貸し主側が主張したとしても、その主張を裏付ける証拠を集める責任は貸し主側自身にあり、その点でも借り主側にとっては有利になっています。ただし、契約書に敷引きの特約が存在する場合や、原状回復を負う範囲について契約書に詳細な記載がある場合には、例外的に敷金が返ってこないこともあります。

契約書を持って弁護士に相談を

 アパートの貸し主(大家さん)が敷金を返してくれないという場合には、契約書を持参の上、返還してもらえる見込みがあるかどうか弁護士に相談されることをおすすめします。また弁護士は、少額請求訴訟の手続きについても説明することができますので、請求金額が少ない場合でも遠慮なく相談に行かれることをおすすめします。

(山陽新聞レディア2011年11月10日掲載)