夫の借金を妻が支払うか

Q:リストラに遭った夫が購入した高級ゴルフ用品の請求書が届きました。公務員の私に支払えという内容です。支払わなければ、私の給料が差し押さえられたりするのでしょうか。このゴルフ用品は夫しか使いません。また、夫は競艇のためサラ金業者から多額の借金をしています。この借金についても私が支払わなければならないのでしょうか。

A:夫婦別産制がとられていますから、預金などの財産はもとより、借金などの負債も夫婦別個で考えます。従って、妻が夫の借金などの支払い義務を負うことはありません。しかし、夫婦として共同の経済活動をしますので、常に「妻に責任なし」とすると不都合な事態が生じます。そこで法律は「日常の家事債務」について、夫婦いずれが契約しても夫婦共同債務として支払うべきとしました。

質問者の方のように、夫が勝手に背負った多額の債務について、妻が連帯責任を負わされるというのはあまりに酷な話です。そのため、夫婦の日常生活に必要とされるか否かで判断します。すなわち、夫婦の社会的地位、職業、資産、収入など生活状態に照らして個別的に判断されます。判例では、家庭用の食料品や衣料品の購入代金、光熱費、医療費、借家の賃料等が「日常の家事債務」に該当するとされています。

この方の夫の債務は夫婦の日常生活とは無関係の負担で、妻が責任を負うことはありません。ただし、夫がゴルフクラブを購入したりサラ金から借財する際、妻がその保証人になっていた場合は、当然妻に支払い義務が生じます。これは、たとえ離婚したとしても免れないので、注意が必要です。

(山陽新聞レディア2011年5月26日掲載)